合資会社池田屋
「自分が食べたいと思うものを作りつづける」 〜老舗企業の大革新 「透明すぎるところてん」 誕生秘話〜
2024.2.8
こんにちは。
おかふる公認ライター、おもしろ創造研究室 室長の岡田です。
今回は、岡崎市で明治より140年以上続く老舗「合資会社池田屋」に取材に行ってきました!
まずは動画をご覧ください。
箸を入れるまで存在が確認できないほどに透明なところてん。
ここまで透明にするために一体どれだけの研究が行われてきたのでしょうか?
本日お話を伺うのは、代表社員の長坂光司さん(左)、奥様で専務の清美さん(右)
―――池田屋の「透明すぎるところてん」はどのようにして誕生したのでしょうか?
長坂「元々は、ところてんの原料となる天草は手作業で洗浄していました。
しかし、20年位前にテレビ番組をきっかけに始まった寒天ブームで、通常時の5倍の注文を受けることになりました。
とても手作業では追いつかない、ということで洗浄専用の機械を導入したのですが、いざ機械で洗浄してみると、天草に驚くほど海の汚れが付着していることに気づきました。
そこから、茶色く濁っていた洗い水が、最後には透明で飲める状態になるまで続けられるように基準を引き上げ、洗浄機で1回あたり13分程度の洗浄を、一回一回水を替えながら、半日かけて10回繰り返し行うことにしました。
その結果、透明感やツヤ感のある「透明すぎるところてん」が誕生しました。」
寒天ブームは私も覚えていますが、それがきっかけで「透明すぎるところてん」が生まれたのですね!
聞いたところによると、これまでに洗浄機械を3回は壊してしまったとのこと
(ちなみに、洗浄機械のメーカーさんに「すぐ壊れるじゃないか」とクレームを入れたところ、「そんなに長時間洗う人は他におらんわ。池田屋さんが洗いすぎだわ。」と逆に叱られたとか・・・。)
ちなみに、ところてんの『味』の基準は、なんと清美さんだそう。
清美さんはところてんが本当に大好きで、光司さんが作るところてんを食べて、
「今日はまあまあだね」
「今日は駄目だね」
「今日はよかったね」
と毎日評価をされているそうです。
大好きゆえに、微々たる違いもわかってしまうのですね。
清美さん曰く、光司さんは、最近また腕を上げたとのことでした。
現在、この「透明すぎるところてん」は8種類のフレーバー(三杯酢・黒みつ・梅みつ・檸檬みつ・柚子みつ・珈琲みつ・桜みつ・抹茶みつ)で提供されています。
―――ところてんといえば三杯酢のイメージが強いですが、なぜ8種類もの味を作られたのですか?
長坂「ところてんが三杯酢で食べられる理由は、特有の磯臭さを酢の酸味で打ち消すためでもあります。
それと比べて『透明すぎるところてん』は、磯臭さや雑味がなく、何にでも合うという自信がありました。
初めは、三杯酢のように酸味のあるものとして『はちみつレモン』、和菓子というイメージから『抹茶宇治金時』の2種類を考案しました。
これに結構な反響があったので、試行錯誤を繰り返し、今の8種類に行きつきました。
私も、ところてんには、磯臭さと三杯酢の酸っぱいイメージがあったため、毛嫌いしていたところがありましたが、池田屋さんのところてんはとっても食べやすくてびっくりしたのを思い出しました。
8種類ある味のうち、岡崎市民だと、『桜』に特別な想いを抱く方が多くいるかと思いますが、味としての『桜』というのはなかなか珍しく感じるかもしれません。
―――『桜みつ味』はどのようなきっかけで生まれたのですか?
長坂「岡崎市制100周年を迎えるタイミングで、岡崎市の花に「さくら」が追加されたことがきっかけです。
元々、「日本のさくらの名所100選」にも選ばれている岡崎公園の桜を見ながらところてんを食べたら風情があるなあと感じていたので、
岡崎らしさをところてんでも伝えていきたいと、『桜みつ味』を加えました。
池田屋の一押しです!」
長坂さんの岡崎市への愛も垣間見ることができました。今では岡崎市に2社しかない製造所ですが、長坂さんはところてんの未来をこう語ってくれました。
―――これからの展望について教えてください。
長坂「私の体が動くうちは、今の品質をしっかり守っていきたい。
「自分が食べたいと思うものを作りつづける」というのが一番大事だと思っています。
また、最近では、市内の中学生にところてんを広めていくために、出張授業もしています。
毎回びっくりするのですが、最近の中学生はところてんを知らない子がたくさんいるんですよね。
食文化としてのところてんを、しっかりと後世に残していくために、“伝える”という部分を大事にしていきたいと思います。」
長坂さんのこだわりの結晶である「透明すぎるところてん」
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